カシミヤ衣類の特徴
特別なはだざわり
カシミヤはなぜ肌触りがよいのでしょう?
肌触り(風合い)の良さには三つの要因があります。
1つめは、繊維が細い事です。カシミヤ繊維の平均直径(14~16マイクロン)は、普通の羊毛(19~24マイクロン)に比べて細いため、しなやかなでありチクチクと皮膚を刺激しません。
2つめは、繊維表面のスケール(キューティクル)が、まばらで突起が小さいからです。スケールが多く大きいと皮膚刺激の原因になります。
最後は、天然カシミヤに含まれている油脂分が繊維表面を覆っていてカシミヤ独特の滑らかな風合いを生み出しているという事です。
繊維自体の肌触り(風合い)の良さは、主に上記3つの要因から生まれますが、ニットや織物等の製品にしたときの肌触りはまた別の要因があげられます。
- ◯生地の伸縮率
- カシミヤ繊維は、羊毛に比べると、繊維の強さはほぼ同じですが伸縮率は40%以上も伸びがあるため、この特性が生地のしなやかさとなって感じられます。
- ◯生地の密度
- 同じ糸を使っても編みや織りの密度が少ない(甘い)方が柔らかく感じます。適正な密度を保ち、編み立てられたカシミヤ製品は摩耗にも強く、表面毛羽立ちやピリング(毛玉)も起こりにくい、風合いのよいカシミヤ製品になります。
- ◯製品加工中の繊維損傷の大小
- デリケートなカシミヤ繊維を傷めず加工するには、特別な技術と繊細な注意が必要です。東洋紡糸では、低温染色技術を始めカシミヤに適した独自の加工方法を確立しています。天然の風合いと異なる科学的な柔軟剤などは一切使用することなく、カシミヤ繊維を損傷させない加工技術が自然な風合いを生み出す事につながります。
軽くて保温/保湿
なぜ、軽くて保温/保湿に優れているのでしょうか?
空気に秘密があります。カシミヤ繊維と他の天然獣毛繊維を、繊維の太さ(繊度)で一本一本比較しますと、カシミヤ繊維は他の繊維より非常に細いという特徴をもっています。その繊度を数値で表すと、
カシミヤは約14~16マイクロン
モヘアは約30~50マイクロン
ヒツジは約20マイクロン前後
とされています。同じ太さの糸であっても、繊維が細ければ細いほど多くの繊維で束ねられた糸に仕上がります。また、カシミヤや羊を初めとする獣毛繊維の一本一本は、繊維によって形状は異なりますが、クリンプと称する縮れ毛状になっています。
クリンプ状で細いカシミヤ繊維は複雑によく絡み合うので、カシミヤの糸は、熱伝導率の低い空気をたくさん抱き込むことになります。その糸を用いて編み立てられるニット衣類は、外気を遮断し、放熱を抑えるという、二重サッシ窓の様な役割を果たしてくれます。熱伝導率が低い空気を、たくさん取り込むことのできるカシミヤニット製品は、軽くて保温/保湿にも優れています。
また、繊維自体の熱伝導率もカシミヤは優れています。カシミヤは0.9で、シルクが1.2、綿は1.5で、ナイロンは6という伝導率になります。(数値が低いほど保温性が高い)
さらにカシミヤなどの動物繊維の表面には一般にスケール(キューティクル)構造があります。このスケールが、開閉して空気中の水分を取り込んだり吐き出したりするために、快適な湿度を保つように調整してくれるのです。天然繊維ならではの快適さは、ここから生まれているので、化学繊維にはない特徴です。JISの公定水分率では、カシミヤは15%、シルクが12%、綿が8.5%でナイロンは4.5%です。ここからもカシミヤの高い吸湿性が分かります。(数値が高いほど吸湿保温性が高い)
艶やかさと光沢感
光沢はどうして生まれるのでしょうか?
それは、カシミヤニットの糸の表面形状、キューティクルが大きく影響しています。
表面が凸凹していると、光の乱反射によって光沢は無くなりますが、表面がフラットであればある程、光は綺麗に反射して光沢は増加します。
顕微鏡下でカシミヤ繊維を観察すると、繊維表面は鱗状のキューティクルで覆われているのが分かります。
カシミヤの表面形状は、たとえば羊毛と比較してみると、大きく異り、羊毛のキューティクル形状は、カシミヤより複雑で数も多く滑らかではないのに対して、カシミヤ繊維は獣毛繊維の中でも特に綺麗なキューティクル形状を保持しています。カシミヤ繊維は非常にデリケートなため、損傷も受けやすく、損傷してしまうとキューティクルが破壊されて、光沢を失う事にもなりますので取り扱いには細心の注意が必要です。損傷するとそれが、カサツキの原因にもなってしまいます。
カシミヤ繊維に潤いを与えしっとりと滑らかな状態を保ち続ける事で、いつまでも素晴らしい艶やかさと光沢感、風合いを維持することができます。